第1回 判例に学ぶ:発信者情報開示命令申立却下決定に対する即時抗告申立事件

お世話になります。
判例に学ぶシリーズを今回から連載を始めます。
本記事は法令の専門家でない人向けに実際の裁判所の事例をもとにリスクに対する知識を学ぶものです。
当然ながら裁判所の決定は過去の判例に大きく左右されますが、このインターネットが普及した時代では、日本国内だけでなく諸外国とも関連しますので、非常に知識が必要になります。
第1回で取り上げる内容はサービスを提供する台湾法人である相手方に対して、プロバイダ契約に基づき提供したインターネット接続サービスを利用についてものものです。

つまり、この事件は、著作権侵害に関する発信者情報開示請求をめぐる国際裁判管轄の判断が争点となったものです。以下に、主な論点を簡単に説明します。
またこの決定は、インターネットを介した国境を超えた紛争における裁判管轄権の重要性と、日本で事業を展開する海外プロバイダへの法的責任の適用範囲を示す重要な判例といえます。

 

事件の概要

  1. 背景
     抗告人は、自身の著作権を侵害した可能性のある投稿(漫画画像のアップロード)が行われたとして、台湾の通信事業者(中華電信股份有限公司)を相手に、プロバイダ責任制限法に基づいて発信者情報の開示を求めました。

  2. 問題点
     台湾の事業者が提供したインターネット接続サービスが利用されているため、日本の裁判所がこの件を審理する国際裁判管轄権を持つかどうかが争点となりました。

原審の判断

東京地方裁判所は以下の理由で申立てを却下しました:

  • 本件投稿は台湾の事業者が台湾国内で提供したサービスを利用して行われたものと認定。
  • 日本の裁判所には、この申立てに関する国際裁判管轄がないと判断。

抗告人の主張

抗告人は、この決定に対して次のように反論しました:

  1. 日本での業務との関連性
     相手方(中華電信)は、日本でSIMカード販売や国際ローミングサービスを提供しており、これは日本国内での業務に該当する。したがって、本件投稿も「日本における業務に関するもの」に当たる。

  2. 日本人向けサービスの利用可能性
     本件投稿は日本語で書かれており、日本人利用者による投稿の可能性が高い。また、日本向けサービスが利用されたことを踏まえれば、この投稿は相手方の日本における業務と関連している。

  3. 柔軟な解釈の必要性
     インターネットを介した著作権侵害の特性を考慮すると、国際裁判管轄の判断基準は柔軟であるべき。

 

この事件は、著作権侵害に関する発信者情報開示請求をめぐる国際裁判管轄の判断が争点となったものです。以下に、主な論点を簡単に説明します。


事件の概要

  1. 背景
     抗告人(X)は、自身の著作権を侵害した可能性のある投稿(漫画画像のアップロード)が行われたとして、台湾の通信事業者(中華電信股份有限公司)を相手に、プロバイダ責任制限法に基づいて発信者情報の開示を求めました。

  2. 問題点
     台湾の事業者が提供したインターネット接続サービスが利用されているため、日本の裁判所がこの件を審理する国際裁判管轄権を持つかどうかが争点となりました。


原審の判断

東京地方裁判所は以下の理由で申立てを却下しました:

  • 本件投稿は台湾の事業者が台湾国内で提供したサービスを利用して行われたものと認定。
  • 日本の裁判所には、この申立てに関する国際裁判管轄がないと判断。

抗告人の主張

抗告人は、この決定に対して次のように反論しました:

  1. 日本での業務との関連性
     相手方(中華電信)は、日本でSIMカード販売や国際ローミングサービスを提供しており、これは日本国内での業務に該当する。したがって、本件投稿も「日本における業務に関するもの」に当たる。

  2. 日本人向けサービスの利用可能性
     本件投稿は日本語で書かれており、日本人利用者による投稿の可能性が高い。また、日本向けサービスが利用されたことを踏まえれば、この投稿は相手方の日本における業務と関連している。

  3. 柔軟な解釈の必要性
     インターネットを介した著作権侵害の特性を考慮すると、国際裁判管轄の判断基準は柔軟であるべき。


知的財産高等裁判所の判断

知財高裁は抗告人の主張を認め、以下の理由で原決定を取り消し、案件を地裁に差し戻しました:

  1. 国際裁判管轄の柔軟な適用
     インターネットの国際性を踏まえ、相手方のサービスが形式的には海外で提供されていても、日本における利用実態を考慮すべきである。

  2. 日本国内業務との関連性
     本件投稿は日本語で記載され、日本向けサービスである可能性が高い。また、相手方は日本国内でSIMカードを販売しており、日本の事業活動と密接な関連があると認定。

  3. 反論の不提出
     相手方が反論を提出しなかったことも判断を後押ししました。

    結論

    • 原決定取り消し
       日本の裁判所に国際裁判管轄があると判断し、案件を地裁に差し戻し。

       

    • 重要なポイント

      1. 国際裁判管轄の判断基準
         国際的なインターネット利用の実態に即した柔軟な基準が必要であり、日本国内での関連性が重視される。

      2. 著作権侵害への対応
         国際的な著作権侵害に対する法的手続の一環として、発信者情報の開示が重要な役割を果たす。

総括

この事件は、インターネット上の国境を超えた著作権侵害問題における国際裁判管轄権の重要性を示しています。知財高裁は、投稿が日本語で行われ、日本向けサービスが利用された可能性を重視し、柔軟な判断基準を採用しました。この結果、日本で事業を展開する海外プロバイダにも国内法の適用可能性を認め、国際的な著作権保護の一歩を示す判例となりました。

著者:加藤登志典